代表インタビュー

一見、知的で物静かな印象の平野さん。
でも話してみると、相手に「親しみやすい安心感」を与える不思議な魅力をお持ちの方です。
「劣等生だった中高時代から奮起一転、最難関の私立大学合格」という映画のような大逆転劇を経験
思春期に味わった苦い経験が、平野さんの価値観の形成に大きな影響を与えたそうです。
司法書士は、「相続に強い士業同士をつなぐコーディネーター」と語る平野さんにお話をお聞きしました。
(令和5年3月14日取材)

平野さんが司法書士になるまで

平野さんのお仕事の内容を教えてください。

主な業務は、不動産の相続や売買の登記、会社・法人の登記をはじめ、相続の手続き、遺産分割協議書や遺言書の作成などです。
特に、相続と生前対策のご案件では、お客様から感謝のお言葉をいただくことが多いです。

司法書士を目指した理由を教えてください。

今振り返ってみると不思議ですが、周りに素晴らしい経営者の方が多く、私も「経営者になりたい」という思いを自然に抱くようになったのがきっかけです。
若いときから「社会起業家になって、世の中の役に立つような仕事をしたい」という想いがありました。

 

行政での仕事が長かったため、当時の私にはすぐに起業できるスキルや経験はありませんでした。そこで、まず司法書士の資格を取得しようと考えました。
法律に関する仕事であれば多くの人の役に立てますし、司法書士の資格があれば独立して起業もできます。
それまで培ってきた経験や知見を活かせる仕事だと思い、チャレンジしました。

 

とはいえ、司法書士は、毎年合格率3%の難関資格です。
合格を勝ち取るまで長期戦になることを覚悟し、それまで勤めていた県庁を退職して自分を追い込みました。
誰とも会わないと心を決めて受験勉強に専念し、3年間の努力の末、2015年に合格しました。
その後、司法書士事務所で3年間の修業期間を経て、2018年に司法書士平野克典事務所を開設しました。

劣等生から超難関大学合格まで

平野さんを語るに欠かせない「人生大逆転ストーリー」があるそうですね。お聞かせいただけますか?

中学生時代にさかのぼります。中学受験を経て、中高一貫の進学校に入学しました。
しかし、その頃に家庭で大きな問題が起こり、自分が安心して過ごせる居場所がない中で、だんだんと前向きに生きる意欲を失っていきました。
成績は底辺まで落ち、1年の半分は授業に遅刻するありさま。
仲の良い友人たちはいましたが、学校を大嫌いになり、もちろん部活もすぐに辞めてしまいました。

 

中高時代は、社会に背を向けて過ごした6年間でした。
進学校だったこともあり、成績が悪い私を軽んじるような態度を取る人たちもいて、先生方からは「合格できる大学はない」と言われました。
結局、現役のときは、どの大学も受けませんでした。

 

でも、自分が本気で勉強したらどこまでできるかを試したいと思い立ち、予備校に入って受験勉強を始めました。
受験の天王山と言われる夏の模試の判定結果は、E判定。そこから受験までの数か月間は、食事・睡眠・入浴の時間以外は、すべて勉強にあてる日々を送りました。
その結果、第1志望の早稲田大学に合格することができました。

念願の大学に合格されたのですね! 周囲の反応はいかがでしたか? どんな学生時代を過ごされたのでしょう?

早稲田大学に入学した途端、周囲の態度が一変しました。
「優秀ですね」と急にちやほやし始める人たちを見て、「世の中の評価なんていい加減なもの。ものごとの表面しか見ていない人たちに振り回されるなんて、バカバカしい」と思いました。
それからは、自分がやりたいと思うことがあれば、自分の心に素直になって何でもやってみようと決めました。

 

大学入学後は、自分のような社会不適応者がどうやって生きていけばよいのかと考え、「自分探し」の日々でした。
また中高と男子校に通っていた私は、早稲田に入って、これで女の子にモテるかもしれないと思っていたのに、合コンに行っても全然モテない(笑)。
中高時代を無為に過ごしたことで、女の子との付き合い方も含めて多くの経験が不足していたのです。
ですから、私がチャレンジしたのは「たくさん失敗すること」でした。
恥ずかしいと思うことも、失敗するかもしれないと恐れることも、何でもやってみる。とにかく、自分の人生の糧として吸収しようと思いました。

 

友人や仲間たちと一緒に大きなイベントを主催し、合コンにも積極的に出かけ、空手も習いました。アメリカに1年間留学し、バックパッカーとして東南アジアを旅するなど、キャンパスライフを存分に楽しみました。
努力すれば人生の選択肢が広がるということ、それを体感することができた5年間でした。そして、素晴らしい友人たちと過ごした時間は、かけがえのない思い出になりました。
これらの経験は、私に大きな自信と人を信頼する勇気を与えてくれました。

 

また、学生時代に光と影の両方を経験したことで、人の痛みを肌感覚でわかるようになりました。
自信が持てない方や、家庭に問題を抱えている方の気持ちを、まるで自分のことのように感じ取れるようになったのです。
家庭教師のアルバイトでは、勉強よりも大事なことで悩んでいる子どもたちの気持ちを理解することができました。

一方で、早稲田大学に入学したことで、いわゆるエリートと呼ばれる人たちの考え方も理解できるようになりました。
こうした多様な経験のおかげで、相手の立場に立って柔軟に考えられるバランス感覚を身につけることができたと思います。

司法書士・平野克典さんについて

平野さんのお仕事のことを教えてください。平野さんが考える司法書士としての「信頼性」とは、何でしょうか?

初めてご相談に来られるお客様の中には、「何をどのように相談したらよいのか、わからない」という方たちもいらっしゃいます。
お客様のお話を丁寧にお聞きし、悩まれている問題を解きほぐし、要点を整理することが大切です。
また、遺産の状況や家族構成だけでなく、ご意向も考慮したうえで、専門的な法律の話をわかりやすくご説明します。

ご信頼をいただくために大事なことは、お客様のお気持ちに配慮し、一番良い解決策をご提案することではないでしょうか。
また、士業に必要な資質としては、「人のために動くことに喜びを感じられる」こと、「問題を解決するために自分の専門性を磨き続ける」ことであり、それらを自然に行えることが大切だと考えます。

他の士業の方との連携を大切にされているそうですが、その理由を教えてください。

例えば、相続税の申告や相続争いをはじめ、土地の分筆、不動産の鑑定評価に至るまで、司法書士の専門分野以外のご相談に対しても、、相続に強い税理士・弁護士・土地家屋調査士・不動産鑑定士などが連携して対応できるようにしています。
このように士業同士がしっかりと協力することによって、お客様をたらい回しにすることや、余計なご心配をさせてしまうことがなくなるため、安心して相続の手続きをしていただけるようになると考えています。

司法書士が取り扱う業務は多いと思いますが、「相続」の分野に注力されているのは、どうしてですか?

司法書士の業務は多岐にわたりますが、「相続」の仕事は「人と人とのつながり」を一番感じることができるからです。
お客様から感謝をいただき、また私にお客様をご紹介くださった方からも感謝をいただけるので、自然と、私にも感謝の気持ちが生まれます。
相続の仕事は、このように「感謝の連鎖」が生まれるところが大きな魅力だと感じています。

平野さんは、一般企業、県庁、独立行政法人など大きな組織で長く勤務されていましたが、そのときのご経験は、どのように役立っていますか?

相手の立場に立って考えることに役立っています。
組織は、異なる価値観や性格を持った人たちが集まって共同作業をする場所です。組織が異なれば、それまで常識と思っていた考え方やルールも大きく変わります。
自分の意見や主張を押し付けても、上手くいきません。
限られた時間の中で、相手の話をよく聞き、論理的にわかりやすい説明をする必要があります。
また、資料作成やスケジューリングを並行して進め、期限までに間に合わせる遂行力や対応調整力を磨けたことも役立っています。

相続には「心の問題」も絡んでくると思います。事務的な手続きのみならず、お客様の「心」には、どのように向き合っていらっしゃいますか?

ご相談に来られるお客様は、ご家族を亡くされるという「喪失体験」をされています。
心の傷が癒えていない状態にあるお客様の立場に立って、丁寧にお話をお聞きし、お客様の気持ちに共感することが大切です。
最近は、「グリーフカウンセリング」という、喪失体験を癒す取り組みも広がってきています。
私が代表理事を務める一般社団法人「日本相続あんしん協会」では、そうした心のケアにも配慮し、グリーフカウンセリングを実践する日本最大級の協会(日本グリーフ専門士協会)と連携をしています。

一般社団法人「日本相続あんしん協会」設立

平野さんの今後の活動について教えてください。

「誰もが笑顔になれる世の中にしたい」という想いから、ずっと「社会起業家になりたい」という気持ちがあります。その想いをカタチにしたのが、2022年に設立した一般社団法人「日本相続あんしん協会」です。
相続の手続きだけではなく、ご家族を亡くされた方たちの心の痛みを癒すことができたら、どんなに良いだろうか。その想いを実現するため、日本グリーフ専門士協会様と連携しながら、さまざまな取り組みを広げていきたいと思っています。

 

将来的には、こうした「相続の手続き」×「心のケア」の取り組みを、国内だけではなく海外にも広げていきたいと考えています。
超高齢社会である日本では、今後も相続・終活の知識やノウハウが積み上がっていきます。これらに心のケアを取り入れた取り組みも併せ、そこにAIを活用することで、これから超高齢社会に向かう多くの国々の皆様にも役立つ知見を提供できると思います。
今後も人口が減り続け、経済力の大きな上昇は見込めない日本でも、こうした相続と心のケアの分野なら、膨大な知見やデータを活かせる日本が輝ける未来があると考えています。
これを実現させるためにも、相続に強い士業はもちろん、相続・終活の事業者の方々との連携を深めていきたいと思います。

般社団法人「日本相続あんしん協会」が掲げるミッションは、「相続業界の無印良品になる」ということですが、相続業界の「無印良品」を目指すとは、どういうことでしょうか?

生活雑貨ブランドの「無印良品」と同様、「良質なサービスと完成品を適正な料金で提供する」ことを大事にしています。
相続はお金の有無にかかわらず、誰にでも必ず起きるものです。生活に根差したノーブランドだからこそ、報酬単価を上げず、お客様が必要なサービスを適正な料金で提供できると考えています。
また「無印良品」の商品はシンプルで使いやすく、飽きのこないデザインになっています。これは長くお客様に愛されたいと願う、当協会の想いとまさに同じです。

 

相続の仕事においての「良質」とは、相続手続きのサービスと完成品のご提供だけではなく、お客様からの安心と信頼をいただけることによってはじめて成り立つと考えています
お客様が安心して相続に向き合うことで、お手続きを無事終えられたあとは、心穏やかに歩き出していただきたいと願っています。

50歳という人生の節目を前に、どんな想いを持たれていますか?

「まだ、何も達成していない」というのが正直なところです。
自分に厳しすぎるというお声もいただきますが、はるか先を進んでいる経営者の方たちの足元にも立てておらず、社会を良くする取り組みの広がりを実感できるまでには、まだ長い道のりが始まったばかりだと感じています。
もっと成長して、世の中の役に立ちたい。必ず道は開ける。
こうした想いを大切に、「相続手続き」×「心のケア」に取り組んでいきたいと思います。

 

もちろん、社会全体としての大きな取り組みだけではなく、身近な人たちとともにどのように過ごすかも、人生においてかけがえのない大切なことだと思います。いくら仕事で成功しても、その喜びを一緒に分かち合う人たちがいなければ寂しいですよね。
自分が良いときも悪いときも支えてくれた、友人や仲間、家族。そうした多くの人たちの支えがなかったら、今の自分はありません。
思春期に暗闇の中にいた私を、光が差す明るい場所へ引っ張り出してくれました。
これからは、世の中のお役に立つことで、お世話になった大切な人たちにたくさんの感謝の気持ちを伝えていきたいと思っています。

●趣味

カフェ巡り(スマホに100件以上を登録)
海外旅行(在学中は東南アジアへバックパッカー旅)
ジムトレーニング(在学中は空手を経験)
心理学(米国留学中は社会心理学を専攻)
読書(心理学、グリーフカウンセリング系、ビジネス書)

●その他

千葉生まれ、横浜育ち、東京在住
47歳で初婚、2023年に長男誕生。現在、妻と協力して子育て真っ盛り。

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