相続コラム

<相続の豆知識> Q6:勘当した息子に遺産を遺したくない…「遺留分」を減らす4つの方法とは?

2025.08.04

「もう何年も顔を合わせていない息子には、1円たりとも遺したくない…」
「浪費癖のある長女では不安。長男にすべての財産を相続させたい…」

そんなご相談を、これまで当事務所では数多くお受けしてきました。
たしかに、遺言書を作れば、自分の想いに沿った遺産の分け方を指定できます。
…しかし、ここに大きな誤解があります。

たとえ遺言書を書いても、「遺留分」を請求されたら、渡したくない相続人にも一定の遺産を渡さなければならないのです。

■「遺留分」とは?
「遺留分」とは、配偶者や子どもなど一定の法定相続人に保障された、最低限の遺産の取得割合のことです。
生活保障のために民法で定められており、遺言の内容よりも優先される強い権利とされています。

■遺留分を減らす4つの方法(ただし注意点あり)
では、どうしても財産を遺したくない相続人がいる場合、遺留分を減らすことはできるのでしょうか

一定の条件下では、遺留分を結果的に「減らす」手段はあります。
ただし、遺留分を意図的に侵害しようとする行為は「公序良俗違反」として無効になるリスクがあるため、慎重な検討が必要です。

ここでは一例として、母親が他界した後、父親が「勘当した息子に財産を渡したくない」という思いから、娘に全財産を相続させる遺言書を作成したケースをもとに考えてみましょう。

① 生命保険を活用する
死亡保険金は、法律上「受取人固有の財産」とされ、原則として遺産には含まれません。
つまり、娘を保険金受取人にしておけば、息子の遺留分を減らすことができます。
ただし、保険金が極端に高額で不公平な場合、裁判で遺留分の対象とされる可能性があります(最高裁平成16年10月29日判決)。

② 10年以上前に生前贈与しておく
遺留分の計算には、亡くなる前10年以内の(相続人への)贈与が、原則として含まれます(民法1044条)。
したがって、10年以上前に娘に贈与しておけば、その分は遺留分の対象から外れます。
ただし、贈与者と受贈者の双方に「不当な目的(他の相続人に損害を与える意図)」があったと判断されれば、時効が適用されず遺留分の対象になります。

③ 生前に「遺留分放棄」の手続きを行う
勘当した息子自身が、家庭裁判所に申し立てをして「遺留分放棄」の許可を受ければ、遺留分を請求されるリスクがなくなります。
ただし、不当な圧力などが無いかどうか、家庭裁判所は本人の意思や事情を慎重に審査します。
実務上は、財産の一部を渡す代わりに放棄してもらうといった交渉が必要になるでしょう。

④ 養子縁組で相続人を増やす
たとえば、父親が孫(娘の子)を養子にすることで、相続人の数を増やし、勘当息子の法定相続分を相対的に減らす方法があります。
例:子が2人 → 法定相続分1/2 → 遺留分1/4
  子が3人 → 法定相続分1/3 → 遺留分1/6
ただし、「遺留分を減らすことだけが目的」、「養親と養子に縁組をする意思が無かった」といった養子縁組は、無効とされるリスクがあります。

■まとめ:遺言書だけでは不十分…生前からの遺留分対策を
「遺言書があれば安心」と思われがちですが、遺留分を無視した内容は相続トラブルを招くかもしれません。
特に、自社株や不動産のように簡単に分けられない資産がある場合は、遺留分を請求されて遺言者の意思が実現できなくなることも。

■相続対策は、早めの専門家への相談が重要です
当事務所では、相続に強い税理士や弁護士と連携し、生前贈与や遺言、遺留分対策のご相談にも対応しております。
財産の評価額の算出や、遺留分の侵害リスクも事前に確認いたします。

「誰にどれだけ遺したいか」、その想いを、法的にしっかり形にしませんか?
まずはお気軽にご相談ください。

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